「目がかすんでいても」

 死期が迫っていることを悟り、ヨセフさんに対して遺言を伝えたヤコブさんでしたが、その後再びヨセフさんを自分のもとへ呼ぶこととなりました。

これらのことの後で、ヨセフに、「お父上が御病気です」との知らせが入ったので、ヨセフは二人の息子マナセとエフライムを連れて行った。  (聖書 創世記 48:1新共同訳)

 147歳という高齢であり、病気を患ったことで本当に死期が近づいたことを感じていたことと思います。ヨセフさんは、そんな父親のもとに2人の息子を連れてお見舞いに向かいました。

 そこで、父からあるお願いをされました。

今、わたしがエジプトのお前のところに来る前に、エジプトの国で生まれたお前の二人の息子をわたしの子供にしたい。(聖書 創世記 48:5新共同訳)

 ヤコブさんは、2人の孫を養子にしたいと申し出ました。この2人の孫は、ヨセフさんがエジプトで結婚をして授かった子どもでした。つまり、イスラエル人の血とエジプト人の血をひいているわけです。

 本当であれば、この2人の孫はこの後エジプト人として高い地位を受けていくことができるはずでした。しかし、ヤコブさんは、神様に祝福されたイスラエルの家系にこの2人を招き入れたいと願いました。また、それは何よりも父ヨセフさんの願いでもありました。

イスラエルは、ヨセフの息子たちを見ながら、「これは誰か」と尋ねた。 ヨセフが父に、「神が、ここで授けてくださったわたしの息子です」と答えると、父は、「ここへ連れて来なさい。彼らを祝福しよう」と言った。 イスラエルの目は老齢のためかすんでよく見えなかったので、ヨセフが二人の息子を父のもとに近寄らせると、父は彼らに口づけをして抱き締めた。 (聖書 創世記 48:810 新共同訳)

 イスラエル、つまりヤコブさんは、この2人の息子を祝福する際、老齢のため目が良く見えない状態になっていました。まさに、自分が騙した父親のイサクさんと同じような状況にありました。2人の孫がエジプト人として高い地位を求めて生きたいと願ってこの申し出を良く思わなければ、騙すこともできたかもしれません。

しかし、ヨセフさんとその2人の息子は、目の良く見えないヤコブさんを騙すことなく、神様に従う生き方を選んでいったのでした。