突然ヨセフさんの屋敷へと連れて来られた兄弟たちは、奴隷にするためではなく、純粋に食事に招待をされたということを知り、その時を待ちました。
ヨセフさんが帰宅すると、兄弟たちは持ってきた贈り物とともにヨセフさんに最大の敬意をあらわしました。
ヨセフさんは、兄たちが約束通り末の弟ベニヤミンを連れて来たことを確認しました。
ヨセフは急いで席を外した。弟懐かしさに、胸が熱くなり、涙がこぼれそうになったからである。ヨセフは奥の部屋に入ると泣いた。(聖書 創世記 43:30 新共同訳)
ヨセフさんが兄弟たちの前で泣きそうになり、隠れて泣いたのは2度目でした。1度目は、最初に兄弟たちがエジプトにやってきた際、自分に対してどのような思いを抱いているのかを知った時でした。
今回は、長らく会っていなかった実の弟の姿を見ることができたことへの感動での涙でした。
しかし、ここで取り乱してしまっては、ヨセフさんの計画が狂ってしまいます。まだ、自分の正体は明かさず、気を取り直して食事の時間を始めました。
兄弟たちは、いちばん上の兄から末の弟まで、ヨセフに向かって年齢順に座らされたので、驚いて互いに顔を見合わせた。そして、料理がヨセフの前からみんなのところへ配られたが、ベニヤミンの分はほかのだれの分より五倍も多かった。一同はぶどう酒を飲み、ヨセフと共に酒宴を楽しんだ。(聖書 創世記 43:33–34 新共同訳)
兄弟たちは、何故エジプトの偉い人物が自分たち兄弟の年の順番を知っているのだろうかと驚きました。勿論、それを理由に「もしかしたらヨセフではないだろうか?」と疑うことはありませんでした。ただただ驚いたことと思います。
また、末のベニヤミンさんには他の兄弟よりも多くのものを提供しました。エジプトの文化では、その席にいる一番上の位のゲストに対して最上のもてなしをするというものがあったそうです。つまり、このゲストの中で、一番末の弟が誰よりも大事なゲストとして扱われたのでした。
昔の兄たちは、末の弟が誰よりも優遇されるのを見て殺意を覚えていました。ヨセフさんは、そのような意味でも、末の弟を誰よりも優遇し、兄たちの心がどのように変わったのかを見ていたのかもしれません。
しかし、結果はみんなで楽しい食事の時間を過ごすことができたということでした。そこにいた全員の心に互いを愛し大切にするという思いがあったからこその楽しい時間だったのではないでしょうか。