長年離れ離れになっていた兄弟が感動の再会を果たしたかと思いきや、ヨセフさんは、自分の正体に気が付いていない兄たちに対し、スパイの容疑をかけて尋問を始めました。
勿論、兄たちはスパイではなく、純粋に国の危機に際して食糧をもらいに来ただけでした。しかし、その弁解の言葉を聞いたヨセフさんは、更に兄たちを追い詰めます。
すると、兄たちの口から弟のことについて語られました。
しかしヨセフが、「いや、お前たちはこの国の手薄な所を探りに来たにちがいない」と言うと、 彼らは答えた。「僕どもは、本当に十二人兄弟で、カナン地方に住むある男の息子たちでございます。末の弟は、今、父のもとにおりますが、もう一人は失いました。」
(聖書 創世記 42:12-13 新共同訳)
実は、ヨセフさんには更に年下の弟がいました。この食糧調達の旅にはその弟は同行していませんでした。
理由は、大切な息子を失った過去の出来事の二の舞になることを恐れた父ヤコブさんが、末の息子は自分のもとに留めておくという決断をしたからでした。
ヨセフさんは、この兄たちの言葉から末の弟の安否を確認し、更には自分のこともしっかりと記憶しているということを確認しました。
すると、ヨセフは言った。 「お前たちは回し者だとわたしが言ったのは、そのことだ。 その点について、お前たちを試すことにする。ファラオの命にかけて言う。いちばん末の弟を、ここに来させよ。それまでは、お前たちをここから出すわけにはいかぬ。(聖書 創世記 42:14∼15 新共同訳)
兄たちが過去の出来事も含めて真実を語っているということを確認したヨセフさんは、まだ自分の正体を明かそうとせず、兄たちに対して1つの課題を出しました。
それは、父ヤコブさんが大切にしている末の弟をこのエジプトの地へと連れて来るというものでした。
一度息子を失ったがゆえに自分のもとに末の息子を留めておくと言った父ヤコブさんにこの課題を告げることは、兄たちにとって難しい課題に思えたかもしれません。
しかし、これはヨセフさんが仕掛けた兄たちに対するテストでした。窮地に追い込まれた時、あの残酷だった兄たちはどのような行動に出るのでしょうか。
自分たちが食糧を得るためなら、ためらいもなく弟を差し出すのか。もしくは、長い年月を経て兄たちは変わっているのか。
神様からの知恵を得て、ヨセフさんにとってもハラハラドキドキの駆け引きが始まりました。