「前か後ろ」

アブラハムさんの甥のロトさんが住むソドムとゴモラの町は、神様の思いから大きくかけ離れてしまった不法がはびこる町でした。アブラハムさんの執り成しはあったものの、この町は滅んでしまうという宣告を受けました。ロトさんは、家族を連れてこの町から逃げるようにと神様から言われます。

この町では、多くの財産を築き、不自由のない生活でした。しかし、今、それを全て置いて町から逃げるようにと言われたわけです。ロトさんは渋りました。そんなロトさんに神様はこう言われました。

「命がけで逃れよ。後ろを振り返ってはいけない。」(聖書 創世記19:17 新共同訳)

生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされたロトさんに対し、神様は、その町で築き上げてきたものを守のではなく、あなたの命を守るようにと言われたのでした。

この後もロトさんは弱音を吐きながらなんとか走り出しました。神様から言われたように、後ろを振り向かずに。

しかし、ロトさんと一緒に逃げていたはずの奥さんは、後ろを振り返ってしまいました。神様が「後ろを振り返るな」と言われたのは、町がどうなったどうかと見るなということよりも、未練を捨てなさいという意味がありました。

ロトさんの奥さんは、今まで自分が住んでいた町、家、友人、財産。色々なものに後ろ髪を引かれ、町から出て逃げてはいましたが、心はまだソドムの町の中にありました。

彼女はこう思っていたかもしれません。「神様はなんてひどいことを。」

神様は命を助けたかったがために、後ろを振り返ってはいけないと言われました。しかし、その神様の思いがわからず、未練を残してきたロトの奥さんにとっては、感謝の言葉すらでてこない状況でした。

神様は、私たちに対して、命を守るために、その滅びてしまう罪という中から「命がけで逃れよ。後ろを振り返ってはいけない」と言われます。

その神様の必死の思いを知ることができたとき、私たちは本当の意味で感謝をすることができるようになります。