ケーキを切り分けたくない理由を挙げるとするならば、上手く等分できなかったらどうしようという心配があるからです。または、形を崩してしまったらどうしようという心配もあります。
しかし、小さい頃思っていたケーキを切りたくない理由はもっと別の理由でした。ケーキを切り分けた人は最初にケーキを選べないというルールを知っていたからです。
確かに、ケーキを切った人が最初に選ぶとなると、等分にはせず、こっそり一つだけ大きく切り分けておくなんてこともあり得るからです。私も隙あらばそうしようと狙っていた時期がありました。
神様に「行きなさい」と言われたアブラハムさんは、甥のロトさんと一緒に旅をしていました。しかし、二人旅というわけではありません。それぞれに家族がいましたし、仕えていた人たちもいました。そして、それぞれに財産も持っていました。
この大きな遊牧民が1つの場所に滞在し、家族や財産が増していくと共存することが難しい問題が生じてきてしまいます。
そこで、年上のアブラハムさんからロトさんに対してこのように提案をしました。
「あなたの前には幾らでも土地があるのだから、ここで別れようではないか。あなたが左に行くなら、わたしは右に行こう。あなたが右に行くなら、わたしは左に行こう。」(聖書 創世記13:9 新共同訳)
普通なら、土地の奪い合いになってもおかしくありません。しかし、アブラハムさんは、年上だから従えというわけでもなく、あなたが選んでいいよと年下のロトさんに選ぶ権利を譲ったのでした。
執着せずに与える心を持つことができるのはとても素敵なことですね。