先日、高尾山登山をしたときのことです。麓から自分のペースで歩き始めてしばらく行くと、前の方に若い人たちのグループがいるのが見えました。初めはあまり気にしていなかったのですが、距離が縮まって来たので「追い越そう」と思い、少し早足になりました。一つのグループを追い越すと、追い越した人たちに抜き返されるのも恥ずかしく思えてさらにペースが上がります。いつの間にかすっかり自分のペースを見失い、人よりも早く歩くことばかりに気持ちが向いてしまいました。
私のような気持ちで山を歩く人へのメッセージでしょうか。高尾山の登山口にはこんな言葉が書かれています。
「人それぞれに歩幅あり 何事も焦らずに 高尾山」
山歩きだけでなく、人生の歩き方にも当てはまる言葉だなあと感じました。私たちは他人と自分を比較する癖がなかなか抜けません。よせばいいのに、人と自分を比べては落ち込み、またあるときには思い上がったりします。どちらも幸福な状態ではありません。
洗礼者ヨハネは、イエス様の先駆けとして大切な役割を果たした人物でした。彼のもとから人々が去り、イエス様の方に集まっていくのを危惧した弟子たちに彼が語った言葉です。
「天の神様が、一人一人にそれぞれの役割を決めてくださる。」
(新約聖書 ヨハネによる福音書3:27 リビングバイブル)
自分の歩幅で、自分に与えられた役割を果たしていく。それは、人との比較や戦いではなく、自分自身との戦いです。いま、あなたに与えられている役割は何でしょうか?
セブンスデー・アドベンチスト甲府キリスト教会 牧師 伊藤 滋