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「忘れて増やす」

エジプトという異国の地にて思いもよらない方法でどん底から引き上げられたヨセフさんは、ファラオという国のトップから全てを任される存在となりました。

 神様から示された通り、早速来る7年間の飢饉への備えにとりかかりました。ここでも神様からの知恵に従い、誠実に国の大事業に取り組んでいきました。

 そんな中で、家族を離れて独りエジプトの地に身をおいていたヨセフさんにとって嬉しい出来事がありました。

 ファラオから与えられたアセナトさんという女性と結婚することで家庭を持ちました。そして、飢饉がやって来る前に、2人の息子を授かりました。

 ヨセフさんは、生まれた2人の息子にそれぞれ深い意味の込められた名前を付けました。

ヨセフは長男をマナセ(忘れさせる)と名付けて言った。「神が、わたしの苦労と父の家のことをすべて忘れさせてくださった。」(聖書 創世記41:51 新共同訳)

兄弟たちの憎悪の結果、奴隷の身となり、更には愛する父親との暮らしから突然引き離されてしまったという辛い人生を送って来ましたが、祝福を通してその辛さを忘れさせてくださったということを長男の名前に込めました。

また、次男をエフライム(増やす)と名付けて言った。「神は、悩みの地で、わたしに子孫を増やしてくださった。」(聖書 創世記41:52 新共同訳)

たった独りで異国の地に連れてこられ、本来なら家庭を持つことなどできなかったかもしれない自分が、今や2人の子どもに恵まれたということへの感謝を込めて次男の名前を付けました。

 2人の息子につけられた名前は、エジプトの国を治める者として誠実に働くヨセフさんの神様への感謝の大きさをかいま見ることができるものでした。

 辛い経験から脱した時、段々と感謝の気持ちが薄れていってしまうということがよくあります。しかし、ヨセフさんは息子たちの名前を呼ぶ度に神様への感謝を思い起こしていたことと思います。

「どん底から引き上げられる」

 国の危機に際して、聡明で知恵のある人物を探すという課題を抱えたファラオでしたが、自分の目の前にいる人物こそ、まさに理想の人物であるということに気が付きました。

お前をわが宮廷の責任者とする。わが国民は皆、お前の命に従うであろう。ただ王位にあるということでだけ、わたしはお前の上に立つ。」  ファラオはヨセフに向かって、「見よ、わたしは今、お前をエジプト全国の上に立てる」と言い、 印章のついた指輪を自分の指からはずしてヨセフの指にはめ、亜麻布の衣服を着せ、金の首飾りをヨセフの首にかけた。 ヨセフを王の第二の車に乗せると、人々はヨセフの前で、「アブレク(敬礼)」と叫んだ。ファラオはこうして、ヨセフをエジプト全国の上に立て、 ヨセフに言った。「わたしはファラオである。お前の許しなしには、このエジプト全国で、だれも、手足を上げてはならない。」

(聖書 創世記 41:4044 新共同訳)

 牢獄に入っていたヨセフさんは、一瞬にして国を任されるまでに引き上げられました。エジプトの人たちからすれば外国人であり、ついさっきまで牢獄に入っていた人です。

 しかし、王様はそんなヨセフさんに対して、大切な印章のついた自分がしていた指輪をヨセフさんの指へと移しました。

 これを見た時、周囲の人たちも「ファラオは本気なんだ」と悟ったことと思います。

 父のもとで特別な上着を着せられて特別な愛情を受けていたヨセフさんは、兄たちに上着を剥ぎ取られ、奴隷へと売られ、一度は色々と任される立場となりましたが牢獄へと入れられてしまいました。

 そんな紆余曲折を経験する中でも、神様はヨセフさんと共におられ、導き、ヨセフさんを成長させられました。そして、だれも予想しなかったところまで引き上げられていきました。

 人間的な視点で見れば、辛くて理不尽に思える歩みでした。しかし、全てはヨセフさんがここに来るために神様が計画されたものでした。

「神様からの知恵」

夢の解き明かしと共に、その夢が現実となった時にどのように対処したらよいかという解決策まで示されたファラオには、1つの課題がありました。

それは、解決策の中で示されたように、7年間の飢饉に備えるために国を治める聡明で知恵のある人物を探すということでした。

もし、この夢が本当であれば、7年間の飢饉という迫り来る困難は命に係わることであり、エジプトという国の存続にも関わるような大事件です。

「そんなことが起こるはずがない」と言って、ヨセフさんを退けることもできたかもしれません。しかし、ファラオはその解き明かしを真剣に受け取りました。

自分の国を誰に託したらよいだろうか。本当に大きな課題であったことと思います。しかし、一連の出来事にしっかりと向き合ったファラオの目の前には、もう既に国を治めるのに最適な人物が用意されていました。

ヨセフの方を向いてファラオは言った。 「神がそういうことをみな示されたからには、お前ほど聡明で知恵のある者は、ほかにはいないであろう。(聖書 創世記 41:39 新共同訳)

ファラオは、自分の夢を解き明かし、更には解決策までを示したヨセフさんに声をかけました。ヨセフさんは、エジプト人からすると、外国から奴隷として売られて来てトラブルの結果ついさっきまで牢獄の中にいた得体の知れない人物でした。

しかし、ヨセフさんがどん底の牢獄の中にあっても、神様に従う者として誠実に生きてきたこと、そして、解き明かしの時のヨセフさんの人柄、それらがファラオの心を掴んで離さなかったのだと思います。

そして何よりも、それがヨセフさん自身のすごさではなく、「神様が示された」というものであったということが、ヨセフさんが選ばれたことの理由として語られていました。

神様からの知恵を求め、その知恵に生きていく時、私たちにとっては思いもよらない方向に進んでいくことがあるんだということを知ることができる出来事でした。

しかし、これは偶然ではなく、神様がしっかりとヨセフさんを導いておられたからこその出来事でした。

「解決策」

夢に悩んでいたファラオは、ヨセフさんに見た夢を話し始めました。ファラオは2つの夢を見ていました。

肥えた7頭の牛をやせ細った7頭の牛が食べてしまう夢、そして、よく実った7つの穂をやせ細った7つの穂が飲み込んでしまうという似たような夢でした。

ヨセフさんは、この2つは同じ意味であるということを説明し、早速この夢の解き明かしを始めました。

「これは、先程ファラオに申し上げましたように、神がこれからなさろうとしていることを、ファラオにお示しになったのです。」(聖書 創世記41:28 新共同訳)

そして、これから起こることというのは、7年間の大豊作とその後にやってくる7年間の飢饉というものでした。

更にこの飢饉というのは国を滅ぼしてしまうほどのものだという説明も加えられました外国から来た奴隷がファラオに向かって「あなたの国は飢饉で滅びる」という宣告をするということはとても勇気のいることだったことと思います。

しかし、神様はヨセフさんに対して夢の解釈だけではなく、もう一つ大切なことを示されました。それが、この一大事に対する解決策です。

「このような次第ですから、ファラオは今すぐ、聡明で知恵のある人物をお見つけになって、エジプトの国を治めさせ、また、国中に監督官をお立てになり、豊作の七年の間、エジプトの国の産物の五分の一を徴収なさいますように。このようにして、これから訪れる豊年の間に食糧をできるかぎり集めさせ、町々の食糧となる穀物をファラオの管理の下に蓄え、保管させるのです。そうすれば、その食糧がエジプトの国を襲う七年の飢饉に対する国の備蓄となり、飢饉によって国が滅びることはないでしょう。」(聖書 創世記41:33∼36 新共同訳)

聡明で知恵のあるリーダーが飢饉に備えて国を治める。これが、示された解決策でした。この解決策の提示によって、絶望的な未来ではなく、安心して迎えることができる時に変わった瞬間だったのではないかと思います。

神様は、聖書の預言を通してこれからどのようなことが起こるのか、そして、世界がどうなっていくのかということを示しておられます。

しかし、神様はどうなるのかだけではなく、そこに対する解決策を示してくださるお方です。

私たちの罪というものが引き起こす結果がどれだけ悲惨なものであったとしても、神様はイエス・キリストの十字架という唯一であり最大の解決策を示してくださいました。私たちがそれを信じ、受け入れ、生き方が変わっていくこと。これが、神様が示してくださっている私たちへの解決策です。

「信頼を得る」

忘れられていたお願いを思い出されたヨセフさんは、王様の見た夢を解き明かすことができる期待の存在として牢獄から出され、身なりをエジプト流に整えられてから王様のもとへと連れて来られました。

「ファラオはヨセフに言った。『わたしは夢を見たのだが、それを解き明かす者がいない。聞くところによれば、お前は夢の話を聞いて、解き明かすことができるそうだが。』ヨセフはファラオに答えた。『わたしではありません。神がファラオの幸いについて告げられるのです。』」(聖書 創世記41:15∼16 新共同訳)

夢の解き明かしができるということについては、ヨセフさん自身も既に牢獄で経験しており神様に信頼をおいているので何も心配いらなかったことと思います。

しかし、ヨセフさんはこのエジプトのトップの前に召し出されても、自分は夢の解き明かしができるんだというようなおごり高ぶるようなことはなく、神様の業であるということを伝えました。

そして、夢に悩まされていたファラオは、目の前にいるヨセフという外国人に対し、自分の見た夢を語り始めました。

もしかすると、ここでヨセフさんがとった態度次第ではファラオの機嫌を損ね、ヨセフさんだけではなく、それを紹介した給仕長も再び命の危険を感じるような状況になりかねなかったかもしれません。

しかし、それでも給仕長が思い出したヨセフという牢獄にいた外国人を紹介したのは、ヨセフさんなら大丈夫だという確信があったからかもしれません。

外国の地においても、どん底まで落とされたような思いのする経験をすることとなったヨセフさんでした。しかし、いつも神様の栄光をあらわす生き方、選択、受け答えをしていることで周囲の信頼を得ていきました。そして、その誠実さを通し、牢獄という辛い場所からエジプトのトップであるファラオの前でファラオを助けるという状況にまで引き上げられたのでした。

そのように、神様はしっかりと導いてくださっていました。