投稿者「伊藤 滋」のアーカイブ

決して忘れず、覚えているからこそ

2011年の東日本大震災から、6年が過ぎようとしています。あの日起きた巨大な地震は、この国で生活していたすべての人の心の中に大きな爪痕を残しました。

しかし、人間は忘れる生き物です。大きな痛みと共に学んだことを時間の経過の中で忘れてしまわないために、日本中で「あの日を忘れない。」という呼びかけがなされています。

私は次の聖書の言葉を思い出しました。少し不思議な言葉にも思えます。


わたしの魂は平和を失い/幸福を忘れた。

わたしは言う/「わたしの生きる力は絶えた/ただ主を待ち望もう」と。

苦汁と欠乏の中で/貧しくさすらったときのことを

決して忘れず、覚えているからこそ/わたしの魂は沈み込んでいても

再び心を励まし、なお待ち望む。

主の慈しみは決して絶えない。主の憐れみは決して尽きない。

(旧約聖書 哀歌3:17~22 新共同訳)


「苦しみを覚えているからこそ、私は神の慈しみを待ち望む」と、この言葉は言っています。私たちは苦しみを忘れようとします。しかし、苦しみを覚えているからこそ得られる希望や慈しみがあるのだと聖書は教えているのです。

過ぎ去ったと思っていた苦しみや痛みが、何かの拍子にぶり返してくるのは本当に辛いことです。「もう治ったと思っていたのに…。」とつぶやきたくなります。しかし、その痛みを覚えているからこそ、受け取ることのできる神様の憐れみがあるのだとするならば、その痛みにも大切な意味がある、と言えるのではないでしょうか。

あの災害が、いまだに過去のことになっていない方々がたくさんおられます。あの日のことを思い出すことで、心の傷が再び疼くという方もおられるでしょう。決して絶えることなく、尽きない神の慈しみが私たちの傷を優しく包んでくださる日が一日も早く来ますように。

※写真は、2011年4月に仙台を訪問した際の新幹線の車両です。

セブンスデー・アドベンチスト甲府キリスト教会 牧師 伊藤 滋

春を待ち望む

プランターに植えたビオラの花の間から、今年もチューリップの芽が顔を出しました。一番寒さの厳しいこの季節にチューリップは土の中で生長し、地面に芽を出します。私は毎年その姿を見ると何とも言えない愛おしい気持ちにさせられます。励まされます。チューリップはあたたかくなったから発芽するのではありません。厳しい寒さの最中に土の中で育ち、芽を出すのです。彼らは私たちに春がもうすぐそこまで来ていることを知らせてくれます。春を待ち望むこの季節に、神様は20170225春を待ち望む様々な植物を通して私たちに「待ち望む」ということの大切さを教えてくださっているのかも知れません。

神を待ち望んだ人々は、待つに値する約束が与えられていました。彼らは、種から生長し始めた芽のように、自分たちの中で動き始めた何かを受け取ったのです。このことはとても重要です。というのは、人が本当に待つことができるのは、待ち望んでいることが、すでに自分たちの中で始まっている場合にのみ可能だからです。…待つことの秘訣は、種はすでに蒔かれており、そこに何ごとかが始まっていると信じることです。

(ヘンリ・ナーウェン『待ち望むということ』より)

私たちの人生には、待ちくたびれるような出来事、なかなか期待しているような結果が出ずに途方に暮れるようなことがたくさん起きます。しかし、聖書は私たちに「主を待ち望むことの力」を約束しています。


しかし主を待ち望む者は新たなる力を得、わしのように翼をはって、のぼることができる。走っても疲れることなく、歩いても弱ることはない。

(旧約聖書 イザヤ40:31 口語訳)


厳しい寒さの中にあっても、植物が春に向けて着実に生長するように、私たちがそれぞれに置かれた厳しい現実の中にあって、神様からの希望を見いだすことが出来ますように。

セブンスデー・アドベンチスト甲府キリスト教会 牧師 伊藤 滋

目標を目指してひたすら走る

昨年11月から英語の勉強をしています。毎日少しずつ勉強するようにしていますが、順調に進むこともあれば、なかなか先に進めないこともあります。

先週、英文法の確認テストをしました。40問中半分の正解でした。このままでは先に進めないと思い、今週もう一度その箇所を復習し、先日同じテストを受けました。結果は…40問中30問正解でした。しかし、分からない問題は教科書を見ながら解きましたので、実際にはもっと低い点数だったと思います。

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私はもう一度この箇所を復習する必要があると思いました。十分に理解していないまま先に進んでも、さらに分からなくなるだけだからです。しかし、同時に焦りを覚えました。同じ箇所を何度もやっていたのでは、先に進むことが出来ないからです。頭を抱えながら先生に相談すると、こんな返事が返ってきました。

「すべての人には『自分のペース』があります。これはあなたが私に教えてくれたことです。あなたは自分のベストを尽くしました。それが最も大切なことです。」

「自分のペースを守ることが大切」というのは、私がランニングをするときに自分に言い聞かせていることでした。自転車であれ、ランニングであれ、山歩きであれ、無理せず自分のペースで前進し続けることがゴールにたどり着く最も確実な方法です。私はこの聖書の言葉が大好きです。


なすべきことはただ一つ、後ろのものを忘れ、前のものに全身を向けつつ、神がキリスト・イエスによって上へ召して、お与えになる賞を得るために、目標を目指してひたすら走ることです。

(新約聖書 フィリピの信徒への手紙3:13,14 新共同訳)


本気で前進しようとすればするほど、逆風が吹き付け、強い重力を感じるものです。しかし私たちには目指すべきゴールがあります。今日一日の歩みが、それぞれのゴールに一歩でも近づくものでありますように。

セブンスデー・アドベンチスト甲府キリスト教会 牧師 伊藤 滋

夜、そばに立って語られる主

気持ちが落ち込んでいるときや、困難な状況に陥っているとき、周囲からの励ましや祈りに支えられることがしばしばあります。「応援しているよ!」「あなたのために祈っているからね。」私自身、これまで何度もそのようなあたたかい言葉に励まされ、立ち上がることが出来ました。

しばらく前になりますが、様々な思いわずらいに心が押しつぶされそうになり、自分の部屋からなかなか出られない日がありました。そんな朝、憂うつな気持ちを必死に振り払うように聖書を開くと、次の言葉が与えられました。


 その夜、主はパウロのそばに立って言われた。「勇気を出せ。エルサレムでわたしのことを力強く証ししたように、ローマでも証しをしなければならない。」

(新約聖書 使徒言行録23:11 新共同訳)


私たちの主は、私が夜(お先真っ暗な状況)を過ごしているときにこそ、そんな私のそばに立って、優しくそして力強く語りかけてくださる方であることを、私は体験しました。その日、不安な

気持ちになることもありましたが、その朝与えられた聖書の言葉に勇気づけられて(「勇気を出せ!」と自分に言い聞かせながら)、一日を乗り切ることが出来ました。

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私たちが力を失っているとき、周囲の人の支えによってそこから立ち上がることができるのは本当に素晴らしいことです。しかし、誰からの助けも得られず、「自分は孤独だ!」と絶望させられるようなときに、神様から自分に語られた言葉によって力を得、立ち上がることのできる人はさらに幸いな人ではないでしょうか?使徒パウロを困難の中で前進させ続けたのは、そのような上からの力でした。私は人から慰めや励ましの声を聞く以上の真剣さと期待感をもって、神様の声に耳を傾けているだろうか?そう自問させられた一日でした。

セブンスデー・アドベンチスト甲府キリスト教会 牧師 伊藤 滋

あなたがたは暗闇の中にいるのではありません。

「世界終末時計」という言葉をご存じでしょうか?

「世界終末時計」とは、核戦争などによる人類の絶滅(終末)を午前0時になぞらえ、その終末までの残り時間を「零時まであと何分」という形で象徴的に示す時計である。実際の動く時計ではなく、一般的に時計の45分から正時までの部分を切り出した絵で表される。(wikipediaより)

この「時計」によれば、これまで最も時計の針が進んだのは米ソが相次いで水爆実験に成功した1953年の2分前、もっとも戻ったのはソ連崩壊により冷戦が終結した1991年の17分前でした。

ちなみに現在2017年の時計の針は、2分30秒前、これは、ドナルド・トランプ米大統領が核廃絶や気候変動対策に対して消極的な発言によるものだということです。

世界中がこの世界の、人類の将来について危機感を抱いている時代に私たちは生かされています。聖書にはどのように書かれているでしょうか。


 兄弟たち、その時と時期についてあなたがたには書き記す必要はありません。盗人が夜やって来るように、主の日は来るということを、あなたがた自身よく知っているからです。人々が「無事だ。安全だ」と言っているそのやさきに、突然、破滅が襲うのです。ちょうど妊婦に産みの苦しみがやって来るのと同じで、決してそれから逃れられません。しかし、兄弟たち、あなたがたは暗闇の中にいるのではありません。ですから、主の日が、盗人のように突然あなたがたを襲うことはないのです。

(新約聖書 Ⅰテサロニケ5:1~4 新共同訳)


以前、防災の研修に出席した際に「正当にこわがる」という言葉を聞きました。私はこの言葉を、根拠のない過剰な安心感を持つこと・必要以上に悲観的になってパニックになることを戒めた言葉だと理解しています。「世界の終末が近い」と言われると、心が騒ぎます。しかし、聖書は「あなたがたは暗闇の中にいるのではない。」と約束してくださいました。神様が私たちに与えてくださった聖書の言葉に立ち返りつつ、今という時代をしっかり見定めて生きていきたいものです。

セブンスデー・アドベンチスト甲府キリスト教会 牧師 伊藤 滋

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※夜明け前の空。立川市にて。